風太郎の日記

日々感じたことや、出来事などを書いていきます。

「汚れた魂」 小説⑤

5 不安定な関係

 原宿駅に着くと地下鉄の神宮前の入り口の傍で麗子は待っていた。
「久しぶり。」
僕は笑顔で挨拶をした。
彼女も笑顔で同じように答えた。
もうすでに辺りは暗くなっていた。彼女が指定してきた時間は遅かった。
コンビニで食料を調達して彼女のマンションへと入って行った。
お弁当を食べ終えると麗子は
「ゲームやらない。」
と聞いてくる。僕は「いいよ。やろう。」
そう答えテレビの電源を入れた。
彼女がまず最初にやるらしい。
「がん・ばむ。」
幼さを残した声でそう言いながらゲームをスタートさせた。
僕はなんだか妙な感情を覚えた。
 ゲームを終えるともう寝ようという話になった。
「じゃあ、私こっちで寝るから、圭佑くんはここで寝てね。」
そう言われこの間と同じように僕はリビングに布団を敷いてもらい眠りに就いた。
 翌朝目が覚めると麗子は戸を開き眠そうな目で出てきた。
化粧を落としていない顔だ。
 けれど、それより気になったのが、開いた戸の向こうに見えるのは毛布だけだ。
「もしかして布団一枚しかないの?」
「うん。」
「どうして、おれ別に布団無くてもよかったのに……。身体痛かったでしょう。」
「大丈夫。」
麗子はそう答えた。
 この子は凄く優しい子なんだと自分の中で像を造り出していた。
 微かに魅かれ始めている。
 けれど彼女は他の男と暮らしている身……。
普段ならそんな事はお構いなしな僕が、何故かこの儚げな麗子という少女に遊びで手を出してはいけないと心の奥で警鐘を鳴らしていた。

 彼女はカラオケが好きらしく、その日の昼間からカラオケに行こうと誘ってきた。
取り立てて遊ぶ事もなかったので、僕は麗子に連れられてカラオケへと向かった。
 二人で四時間もカラオケに居座り、お酒を飲み、自堕落ともいえる時間を過ごし、また麗子と男が暮らしているマンションへと向かった。
 居間にいると、多少のお酒のせいか、無性に麗子を抱きたくなった。
けれどその夜、僕は一緒に寝ようとだけ言い、腕枕をして眠った。
 彼女は僕の腕と胸に頭をのせ、
「凄い。」
とだけ言った。
 波乗りをして鍛えられた体だからだろうか、けれど彼女はそれ以上何も言わなかった。

 次の日の朝、僕は堪えられなくなり彼女を抱いた。
 
 正確に言えば、途中でやめてしまった。彼女が生理だったからだ。
僕は麗子に優しくくちづけをし、そっとパジャマのボタンをはずした……。
彼女は体を震わせる。うぶな子だと僕はますます好感を持った。
けれど、行為はそこまで。
がっかりした気持ちも少しあったが、何故か愛おしい気持ちが溢れ返って来た。
 その日の昼、僕達は、付き合おうとお互い誓い合った。このマンションを出て、二人で暮らそうと。
 僕は求人誌を買って来て、寮の付いている仕事を探した。
まだ景気が良かった当時は寮付きの仕事は沢山あった。
色々仕事を見比べていると、麗子の家の電話が鳴った。
「しっ。」
そう指で唇を押さえる仕草を彼女はした。

 それは間違いなく麗子の彼氏からの電話だった。
 電話を切り、彼女は浮かない顔をした。
「彼がもう帰って来る。」
僕はがっかりしたが、これから始まる麗子との生活を考えると、さほどでもない心の自分がいた。