風太郎の日記

日々感じたことや、出来事などを書いていきます。

「汚れた魂」 小説 ②

2 出会いは新宿から

「こっち麗子、それでぇ、この人が圭佑さん。」
新宿の街中で僕と彼女は紹介された。ただ単に遊ぶということだ。別に付き合う相手として紹介されたわけではない。
 軽い僕はパッと見て彼女がつけているアクセサリーをからかった。
「それ数珠?」馬鹿にしたようにとられてもおかしくないような口調で言った。
「違うよ。」
明らかにムッとした表情で麗子という女の子は言った。それが僕と彼女の一番最初に交わした言葉だった。
「とりあえずどうしようか。」三人は何をして遊ぶのか決めていない。僕以外は未成年。けれどその頃はまだ居酒屋もどこもうるさくなかった。
「とにかくこの荷物どうにかしなくちゃ。」
僕は仕事をサボって遊びに来ていた。大きなボストンバッグには作業着やら何やらが入っていた。
「じゃあ、コインロッカーに預ければ?」
麗子はそう言うとスタスタ歩き出した。しばらく人ごみを歩いていくとロッカーが見えた。
僕が荷物を入れると彼女は不意に百円玉をお金の投入口に入れだした。僕はちょっとビックリした。(ふぅん。このコお金持ってるんだ……。)
 麗子の提案でカラオケに行くことになった。
二人の女の子たちは十八歳だ。それでもお酒を飲みながら歌っていた。カルアミルクとカシスオレンジを頼んでいた。僕はいつものように生ビールをまず飲む。そして飛び跳ねて騒いで歌っている。女の子たちは僕の馬鹿っぷりを見て笑っている。麗子は中森明菜を歌っていた……。
 二、三時間歌ったところで次の店に行こうということになった。僕が、
「じゃあ、居酒屋に行こう!」
と言ってカラオケを出た。会計はやっぱり率先して麗子が払った。支払いをすませて店を出ると僕は思わず聞いた。
「何の仕事してるの。」
学校は辞めていることは沙央里に聞いていた。
「ん?キャバクラ。」
屈託のない笑顔でさらりと答えた。僕は特に驚きはしなかった。それで納得がいった。黒い高そうなワンピース。これもまた高そうなハイヒール。とてもその年の女の子がするような格好ではなかった。そして彼女の持っているバッグはシャネルだった。
 アルタの近くにある居酒屋に入っていくと、店員が何名様ですかと聞いてきた。
「三人。」
陽気にそう答えると店の奥に案内された。飲み始めて十分位経ち、何気を装い僕は聞いてみた。
「彼氏はいるの?」
 若い男特有のお決まりの台詞だ。あわよくば目の前にいる女の子と寝たい。そんな単純な性の欲求から出た言葉だった。けれど彼氏がいるかいないかは大した問題ではなく、後々面倒がある可能性が有るか無いかを知りたいだけなのだ。麗子は少し酔った為か軽く頬を染め、
「いるよ。」
僕の目を意味深に見ながら答えた。僕も別にがっかりした様子も無かった。この位可愛い子なんだ、彼氏の一人や二人いたって全然おかしくない。ましてや僕にとってみたら、男がいたって寝る女の子達が沢山いることは経験上分かっている。
「圭佑君幾つだっけ。」
麗子は上機嫌でたずねた。
「オレは二十歳だよ。」
「仕事行かなくて大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫。」
軽薄な声で僕は答えた。
「そんなつまらない話はやめて、飲もう。すみません、中生ひとつ!」

かなりテンションが上がる位飲んだ三人は表に出た。
「うち来る?」
麗子は二人に聞いてきた。
「行ってみたい。私も行った事ないんだぁ。」
沙央里がそう答えると三人とも新宿駅の東口へと向かった。駅前の交差点は人でごった返していた。
 信号待ちをして彼女と並んでみると、かなり小柄に感じた。そして何よりワンピースから伸びた手足はバービー人形のように白くて細かった。
 周りにはサーフ系の格好をした二十歳前後の男達や、髭に坊主頭のイカつい青年。サラリーマン。遊びなれたようなOL。いろんな人種がひしめき合っていた。
 肩と肩をぶつけながら人混みを掻き分け改札口にたどり着いた。行き先は原宿。
 山手線はすぐに僕達を原宿まで運んだ。
 神宮前の住宅街にあるマンションへと彼女は僕達を連れて行った。きっとそこは家賃が高いだろうと誰もが思うような建物だった。
「へぇ、いい所に住んでるんだね。」
僕は一人で感心していた。玄関を入って突き当たりの、白いドアで閉ざされた部屋を開けようとした。
「ダメ!そこは!」
麗子はとっさに僕を止めた。
「そこ、彼の部屋だから開けないで。」
「え?自分専用の部屋を持っているの?」
「うん。絵を描くために使っている部屋なの。」
僕はビックリした。
(同棲していて自分専用の部屋か……。)
 三人は他愛もない話で笑い、盛り上がっていた。
 「じゃあ、そろそろ寝ようか?」
誰が言うともなしに夜が更けるとともに言い出した。
 麗子は寝室。僕と沙央里はリビングに寝た。